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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(あ)867号 判決 1956年9月25日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人神保泰一の上告趣意第一点について。

所論は、選挙権被選挙権の停止処分は、右停止に加えてその停止期間中一切の選挙運動を禁止することとなり、結局右停止処分はすべての国民参政権の行使を禁圧することとなるから、公職選挙法一三七条の三の規定は、憲法一一条一五条および四四条の趣旨に違反するというに帰する。しかし「公職選挙法二五二条所定の選挙犯罪は、いずれも選挙の公正を害する犯罪であって、かかる犯罪の処刑者は、すなわち現に選挙の公正を害したものとして、選挙に関与せしめるに不適当なものとみとめるべきであるから、これを一定の期間、公職の選挙に関与することから排除するのは相当であ」ること、そして公職の「選挙の公正はあくまでも厳粛に保持されなければならないのであって、一旦この公正を阻害し、選挙に関与せしめることが不適当とみとめられるものは、しばらく、被選挙権、選挙権の行使から遠ざけて選挙の公正を確保すると共に、本人の反省を促すことは相当であるから、これを以て不当に国民の参政権を奪うものというべきではない」ことは当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第四三九号同三〇年二月九日大法廷判決・集九巻二号二一七頁)とするところであるから、この基本的趣旨に徴すれば、選挙犯罪者の選挙運動の自由を制限することが、憲法に違反するものでないことも自から明らかであって、所論は採用することはできない。

同第二点について。

所論の公職選挙法二五二条一項の規定が憲法一四条に違反するという主張の理由のないことは、第一点に引用した当裁判所大法廷の判示するところであり、同三七条一項違反の理由とする所論については、公職選挙法二五二条三項の規定の運用により所論のような不均衡不合理を防ぐに十分であるのみならず、憲法三七条一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもつ裁判所の裁判を意味するものであり、被告人側から見て所論のような不服があっても右憲法の条規に違反するものといえないことは、当裁判所大法廷判例(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日判決・刑集二巻五号五一一頁参照)の趣旨とするところであるから、所論はいずれも採用できない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 垂水克己)

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